HOI4/逆上洛

天下分け目の戦い

開戦

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京都軍はその広大な戦線での状況把握に努めるため、防衛重視の作戦を行った。これは、関西平定の時の失敗を反省しての事であった。

各地の軍団から集められた大量の情報が前線から遠く離れた京都の総司令部に次々と送られてくる。

開戦から約半月ほど経過してからもたらされ、分析された重大な報告は以下の通りであった。

1:神奈川県は首都保護圏の行動に追従せず、戦争状態に移行しなかった。
2:開戦前の予想通り、敵軍に少なくない補給の不足が発生している。
3:空軍はほぼ全ての戦線において制空権を確保した。
4:敵軍の攻勢は完全に阻止することができた。

(門脇)「予想したほど敵の攻勢が強くなかったか。」
 
    「しかし、前線に出なくては本当の状況がわからん。前線に総司令部を設けるべきか?」

(京都軍参謀)「将軍は軍事だけではなく、政治にもかかわる身です。万が一のことを考えればやめていただきたいですな。」

(門脇)「やはりそうだろうな…。」

この戦いに恐らく2度目はない。となると、前線に赴いて陣頭指揮を執り、持てる力の全てを使いたいのが門脇の本心であり、本懐でもある。

だが、それが許されないほど戦争は進化した。今はただ、前線により効果的な指令を言葉で伝えることだけである。

門脇はほどなくして、神奈川に宣戦布告した。これは神奈川から進軍するルートがこの戦争においての京都軍の勝利の鍵でもあったからだ。

また、他の戦線も徐々に攻勢を開始した。ここからがこの戦争の本番である。

山で、街で、森林地帯で

京都が接していた県境のうち長野、山梨、神奈川という広大な戦線の全てで熾烈な戦いは続いている。この戦線はどこかの湖で途切れることもなければ、巨大な山脈さえも戦場の例外とはならなかった。

戦争は京都軍の優勢である。神奈川西部は既に陥落し、前線で指揮する司令官たちには一応の安心を感じられた。だが、関東軍も各地からうまく戦力を転用し、防衛することで京都軍の更なる突破を阻止した。

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長野と山梨の戦線ではこの時でも兵士が広大な森林地帯や山岳地帯を進んでいる。補給も万全でなければどこから敵が側面攻撃を行うかという恐怖に襲われていた。これは関西での戦争でも同様であったが、この時とは戦場が広いこともあり、近くの味方との連携効率も格段に下がっていたのだ。

さらに、雪にも襲われていたことで部隊はさらに消耗した。途中で町を見つければ京都軍の部隊は一目散に制圧作戦を行った。まるで遭難者のようであった。

かといって、神奈川戦線も楽ではない。関東特有の広大な人口密集地帯が京都軍を苦しめ始めた。住宅街が森林地帯の代わりとなったのだ。既に民間人が避難したこともあり、関東軍は住宅の屋根や、庭に隠れ、ビルは要塞と化した。これも市街地が広いことと、敵空軍との熾烈な制空権の奪い合いによる対地支援の不足が京都軍の進軍速度を低下させた。

この戦いに逃げ場はない

海の侵略者と守護者

太平洋艦隊は開戦と同時に敵主力艦隊の捜索を開始した。だが、敵艦隊を発見するには至らず、アレックスはいまだ成果を上げられない海軍の状況に苛立っていた。

(アレックス)「決定的ナ制海権の確保がナケレバ陸軍は沿岸にもチュウイスルことになる…」

       「なんとか敵艦隊を誘い出さないトいけない…!」

つい先日にも開戦時に千葉への陽動強襲上陸を行った10個師団が関東軍のカウンター上陸により初島で殲滅されてしまった。これは京都軍が制海権を確保できなかった何よりの証拠でもあった。

アレックスはここで敵を誘い出すために太平洋艦隊の一部を使った通商破壊作戦を命令した。輸送船団に被害が出ることで敵海軍は護衛戦力を割かねばならない。つまり、この護衛艦隊を誘い出して、敵艦隊を徐々に消耗させるという事である。

この作戦はすぐに効果が出始めた。敵艦隊の活動が活発化したのである。

遂に京都軍のある戦隊が敵艦隊と初めて大規模な戦闘を開始した。戦力差は以下のとおりである。

京都軍軽巡洋艦7隻・駆逐艦36隻
関東軍軽巡洋艦5隻・駆逐艦12隻・輸送船1隻

日本崩壊後から高度な軍事技術が失われたこともあり、ミサイルに関しては使用不能と言ってもよい状況であった。これは戦艦の復活により海上戦闘が第二次大戦以前に戻ったことを意味した。

双方とも砲撃戦に移行し、空軍の支援もないまま戦闘は開始される。このような状況下ではかつて補給艦扱いであった「おうみ」でさえも京都軍の脅威となった。

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戦闘は双方とも多くの駆逐艦を失い、終結した。だが、この後もアレックスによる通商破壊戦略とそれから守る関東海軍との戦闘は幾度となく発生するのである。

しかし、アレックスが懸念していた横須賀の米艦隊は一向に確認されなかった。真実は横須賀が陥落するまでわからないということなのだろう。

1944年6月7日 リニア中央新幹線開通

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幾多の動乱の中でもリニアの建設は途絶えることなく進み、ついに東京から大阪への全線開通が達成された。現在のところ、関東地方での戦乱による被害も少なく、1日に2往復程度ではあるが運行されているとのことである。

だが、今までの情勢下においてなぜリニアが走ることができるように至ったかは運営会社の地道な政治活動のたまものである。

(門脇)「しかし、うまくやってくれたよな。様々な陣営に呼びかけてリニアに関してはいかなる陣営にも属さない中立地帯であって、リニアを使った戦争被害の類の責任は一切ないという事を認識させた。」

    「確かに経済効果はすさまじい影響を見せているし、リニアを使った関東からの脱出や移民が進んでいる。関東には悪い話かもしれんが全国的に見れば利益が出る話になったのが証明されたわけだな。」

しかし、中立地帯であると同時に自由な移動が可能だという事による新たな脅威もすぐに門脇に伝えられた。

(京都軍参謀)「―門脇将軍ですか?新大阪駅のリニアホームで検問を行っている警備部隊から埼玉軍の特殊部隊らしき集団を拘束したと報告がありました。爆薬や、サブマシンガンが既に確認されています。」

(門脇)(そりゃそうだ。自由な移動ができるってことはすぐに要衝を襲撃できるわけだからな。)

この関東軍の特殊攻撃計画はこの後も幾度となく試みられることとなる。

1944年6月16日 八王子占領

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神奈川県西部を制圧した京都軍は東進する部隊と北上する部隊に分かれ、攻勢を続けて八王子の占領に成功した。この都市は東京軍の拠点ではあるものの戦略的価値は少ない。

しかし、この八王子を占領したことで京都軍はついに東京領への第一歩をようやく踏み出したこととなる。その点でいえばこの都市の精神的価値が非常に高かった。

交渉

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(京都軍士官)「畜生、上層部の奴ら、いつもとは違って占領を催促するなんてなぁ。たしかに戦略的に重要な拠点であるのはわかるけどよぉ…」

       「ここが横須賀駅か?…おいおい、既に俺達の艦隊が湾内にいるじゃないか。

横須賀に近づくにつれて京都軍上層部は当該地域の部隊に積極的な攻勢と横須賀の占領を催促した。全線にわたり堅実な攻撃を行うのが京都軍の戦法であるはずだが、ここにきて限定的にそこから逸脱したのはアレックスが上層部に働きかけたからであった。

いまだに残る米艦隊の真相。それを解き明かすためである。

既にアレックスは現地の情報が足りない中、横須賀基地へコンタクトを行った。

(アレックス)「この暗号を送れば反応があるはズ…」

アレックスが送った暗号は「アメリカン・ドリーム」。日本に残った残存艦艇が独自にコンタクトする際に使用が許されるいわばあいさつの暗号である。

…そして、この暗号は日本が海外との交流ができる状態まで復興した事を本土に知らせるための暗号でもある。

(空母あかぎ艦長)「アレックス提督!通信が入りました。相手の名前はロバート・A・ジョンソンだそうで、提督との直接会話を求めています!」

(アレックス)「!」

       「すぐに回線を寄越してクレ!」

アレックスはこの名を知っていた。米海軍に入隊してからの友人であり第7艦隊の総司令である。彼が生きており、基地にいるという事は、第7艦隊の親玉に重大な事態が起こっている可能性が低いという事である。

(ロバート)「(噂は聞いていたぞアレックス。ずいぶんとご活躍のようじゃないか。)」

英語で会話は進められ、アレックスはロバートの招きにより護衛なしで米海軍の横須賀基地へと上陸した。


(ロバート)「やあアレックス。軍服以外は変わりなさそうで安心したよ。」

(アレックス)「あなたは、ずいぶんと変わってしまいましたね…」

顔には面影が残っているが、おおらかで腹が出ていた以前の姿から、やせ細り、目にクマができている友人の姿にアレックスは驚かされてしまった。確かにロバートなのだろうが、どうやら、この情勢下でのストレスにやられてしまったらしい。

(アレックス)「しかし、艦隊もご健在なようですね。」

(ロバート)「いや、そうでもないのさ。ロクな整備も補給もないからな。船の老朽化が問題となっている。食料を横須賀市から裏で調達し続けることができているのだけが救いだな。」

確かに周りをよく見るとくたびれた艦船が多く見える。まだ戦闘には耐えられそうではあるが、このままでは米艦隊が自然消滅しかねないとアレックスは感じた。

(アレックス)「どうにかできそうですかね?」

(ロバート)「それも含めていろいろと話そうじゃないか。」

二人は原子力空母ロナルド・レーガンのブリッジに移動した。


(ロバート)「先日、無人の超小型潜水艇が横須賀基地に漂着しているのが確認された。冗談だと思ったが、中身は日本あての物だった。」

(アレックス)「…手紙の類ですか?」

(ロバート)「米本土の新聞だよ。ご丁寧に翻訳付きでな。ただの新聞かと思ったがね、一面には戦争の話題が書いてあったんだよ。知らない間にアメリカンドリーム計画は最悪のシナリオになっていたわけだ。全面戦争はすでに2年程経過しているようだ。」

      「この際、君に教えてしまおう。アメリカンドリームという暗号はこの計画のために作られた暗号なわけだ。そして、日本を世界から孤立させたのはほかならぬ我々アメリカ合衆国だ。」

アレックスは衝撃を受けた。だが、そこからさらに問い詰めることも、考えるまもなく、ロバートは計画の真相を明かし始めた。


ロバートのみに伝達されたアメリカンドリーム(仮称)計画の詳細はこうであったという。

1.日本が国外との一切の連絡が絶たれることが予測されるが、米国・インドと中国・ロシアとの全面戦争一歩手前の情勢下において戦争状態に移行した場合、米国は軍事力低下による世界に対する影響力の激減が見込まれる。

2.特にアメリカ海軍の被害は大きく、最低でも4個艦隊が半壊ないし壊滅の危機に瀕する。

3.意図的に第7艦隊を日本に駐留させ、日本政府の再建後の米国主導の体制回復と艦隊を回収することで戦争中もしくは戦後の米艦隊戦力の再建を果たす。

4.このためには日本が米国以外からの強制的な再建を防がなくてはならない。そのためには秘密裏に…

ここでロバートは話を打ち切ってしまった。

(アレックス)「肝心のその先はどうなっているのですか?」

(ロバート)「それは取引が成立したらにしよう。確かにアメリカが原因ではあるが、そのために使われたモノについてはまだ明かせないな。」

      「正直に言うとな…この計画の最終段階には日本政府の再建が必要だ。だが、京都は新たな日本政府になれるか私はまだ確証が持てない。確かに君たちには天皇がいる。武家が再興したのはよくは思ってないが、そのおかげで日本経済の主要部分を掌握しつつある。正当性は十分だ。」

      「しかし、強力な勢力である東北と北海道の同盟や、西日本の掌握は達成されていない。それに我が艦隊の損耗も無視できないがまだ様子見できる余裕はある。我が米軍の再建も必要だが、依然と同じように日本と米国との関係を維持するのもこの計画には書かれている。よって、完成された日本政府が必要なわけだ。」

(アレックス)「つまり、そのために京都政府を試す必要があると?」

(ロバート)「そうだ。本当なら時間をかけて日本が復活すればよかったのだが、国内外の情勢が変化しすぎたことを知ったからな…こうもしなくてはならなくなったわけだ。」

      「アレックス。そっちの政府と話ができるようにはしてくれないか?」

もちろんアレックスは快諾した。

…だが、京都政府と第7艦隊の対談はうまく進みはしなかった。ロバートの発言の通り、京都に正当性はあっても日本全体を見れば京都が日本となるだけの内政や勢力が整えられていなかったからである。


1944年9月24日 山梨降伏

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京都軍は速度こそ遅いものの、着実に進撃していた。そのさなかでついに山梨政府は甲府の占領により降伏した。

前線の兵士は歓喜に満ちていたのだが、同時に甲府への一刻も早い進行を目論んだ前線の指揮官によるやや無謀な命令は各地での疲労の蓄積を深刻化させることとなった。

横須賀と甲府の2つの都市を攻略することは戦略的に問題はない。しかし、ここに時間の余裕を失わせたことで京都軍は思いもよらない敗北を始める。

逆襲

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山梨降伏から約1週間。東部戦線から次々と緊急事態を知らせる報告が京都軍総司令部へと届けられる。敵軍が大規模攻勢を仕掛け、東海道・横須賀線の沿線から南下を始めたというのだ。横浜、横須賀、三浦半島は速やかに占領され、太平洋艦隊はすぐさま東京湾へと脱出した。

いまだに疲弊から立ち直れていない京都軍はいかに精強とはいえ、各地で敗走を開始している。門脇は前線に防衛可能なラインまでの独断での撤退を許可し、自身はこれに対応するための打開策を講じなくてはならなかった。

(門脇)「どこかに余力のある師団はないものか?」

(参謀)「前線では撤退による疲労が重なっています。装備、弾薬、士気の全てが旺盛な予備師団は…」

(門脇)「中部戦線か!」

門脇は突然に思い出した。それは開戦直後に新たに編成した24個師団である。この軍団は中部での万が一の後方への突破を防ぐため前線の穴埋めを担当するものである。山梨陥落と共に中部戦線の兵力差は京都側に大きく傾いた。すでに彼らなしでも前線は完全に機能することに門脇は気が付いたのである。

かくして、24個の師団が中部戦線から東部戦線へと移動した。さらに、中部戦線では長野方面を中心とした攻勢を開始し、敵の処理能力を飽和させる作戦を開始した。

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約3か月という間に東部戦線は何とか横須賀の奪還までは完了した。関東軍もこれを阻止しようと激しい攻撃を加えていたが、この長い間の兵力集中は同時に多方面での更なる劣勢を呼び込んだ。

当初の通り、長野方面は長野の国土の8割を占領。長野の降伏も時間の問題となる。

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東部戦線もついに敵の攻勢を跳ね返し、そのままの勢いで横浜と川崎に進撃し、神奈川県は降伏した。

逆上洛

錦の御旗

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東部戦線での損耗と、各地での敗退により、関東軍は前線での兵力不足に陥る。だが、東京を死守するだけの兵力はいまだに健在であった。東京軍は旧国会議事堂への政府移転を開始するとともに山手線の幅広い環状線を河川に見立てた防御ラインを策定した。

京都軍は新宿の占領を速やかに行ったものの、東京軍の思惑通り、戦線の膠着が始まっていた。しかし、その時であった。

(京都軍前線指揮官)「後方からこんなにたくさんの物資が…?こんなの頼んだ覚えはないぞ?」

新宿に仮司令部を設けた京都軍の前線に大量の覚えのない物資が運び込まれた。ご丁寧に菊の紋章が描かれているのが各地の兵士の疑問を増やした。

(京都軍補給部隊)「いや、その、私もわからないのですよ。とりあえずここに運べと言われただけで。」

(京都軍前線指揮官)「ならば開くまでだ…ってなんだこれは!」

          「―錦の御旗か!」

(門脇)「そういう事だよ。」

(京都軍前線指揮官)「将軍!?ここは危のうございます!一体なぜここに!?」

(門脇)「私が将軍となって政治と軍を動かしてきた意味というのは陛下の皇居への帰還を実現することだ。それをただ後方で見るというのは私自身が許さなかった。」

    「無理を言ってすまん。ただの我がままだ。だが、付き合ってくれるか?」

(京都軍前線指揮官)「何をおっしゃいますか…こんな旗を持ってこられては、私のようなものには似合いません。将軍がいてこその錦の御旗であります!ぜひお供させてください!」

3月18日、半包囲化にある山手線の外側にいる部隊から錦の御旗が掲げられた。東京軍にはこの意味を知るものもいれば、知らないものも多かった。だが、武家復活による天皇の立場を再確認した教育が行われていた京都軍の兵士にとっては、これはそれとは違う、神聖な意味を持っていた。京都軍の士気は高まり、作戦は開始された。

門脇は徹底的な砲火力と航空戦力による火力陣地の無効化を進め、沈黙したエリアから突入を開始した。単純ながらも数的優位を生かしたこの攻撃は効果があった。

だが、予想外なことに誰が広めたかは知らないが、重要施設へ錦の御旗を掲げるための競争が始まっていた。火力陣地の制圧が遅れた部隊はいわゆる古来からの突撃を行い、一点突破を試みる部隊も存在した。

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競争心と士気の高さから、池袋から線路を超えた部隊が官庁街への突破を成し遂げ、続いて新宿から突破した部隊がこれを追った。最終的には池袋側が国会を、新宿側が皇居を奪還した。これによりついに東京政府は全面降伏を宣言。各地の残存勢力もこれに続いた。

皇族の東京脱出から5年以上の月日が流れ、ついに日本の中心地は正当な皇族による支配を取り戻した。

暗雲

関東軍は東京を盟主とした勢力である。その彼らが降伏し、東京が古来の天皇による日本らしい支配体制に戻ったにもかかわらず、埼玉・群馬・千葉・栃木・宇都宮・長野は降伏を受け入れず抵抗をつづけた。

埼玉が占領されつつあると、その支配体制の弱体化から、ワラビスタンを名乗る民族主義の反乱まで起こる始末である。

飯島はそんな彼らに興味を持ち始め、率先して捕虜と接触した。日本は取り戻されつつあるのになぜ、彼らは戦い続けるのか。それを明らかにするためである。

(飯島)「君たちを責め立てるつもりはない、だが、なぜ、東京が降伏しても戦い続けたのだ?」

(群馬軍捕虜)「何を言っているのですか?私の故郷は東京ではなく群馬です。故郷を守るための戦いに何の文句があるのですか?」

(埼玉軍捕虜)「同じ意見だ。東京に心を売ってはいない。」

(飯島)「しかし、京都は陛下と共に日本を取り戻すための正統性を確立した。それを拒否するとは…君たちにとって日本とは何だ?」

この発言は飯島にとっては本心ではない。だが、答えを引き出すためには彼自身が愛国者を演じさせる必要があった。

(埼玉軍捕虜)「日本なんてものはもう存在しない。ただ、あんたたち京都が天皇を擁立して日本を名乗ろうとしているだけじゃないか。」
  
       「これはただ、日本と呼ばれるエリアをただ、誰が、どこの都道府県が支配するかという話に過ぎない。俺達埼玉政府が日本を支配したところで、それは俺達の故郷である埼玉県による日本の復活だ。」

(千葉軍捕虜)「それに、天皇が皇居に戻って日本を再建したところでもそれはただ、以前の無能な政府が戻るだけだ。アンタも知っているはずだ。日本崩壊直後の長きにわたる無政府状態を引き起こしたあの日本政府のシステムに対する批判が高まったからこそ47都道府県は国として独立したんだ。」

       「こんな状態で以前の体制が受け入れられるわけもないし、愛国心もない。」

(飯島)「…やはり、そういう事だったか。」

決着

もはや、各地の残存勢力は主力である東京軍を失い、壊滅への道を進んでいた…

1945年4月20日 ワラビスタン降伏

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1945年4月29日 埼玉降伏

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1945年6月26日 長野降伏

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1945年7月7日 群馬降伏

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1945年9月2日 千葉降伏

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1945年9月17日 栃木・宇都宮降伏

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京都政府はここに、日本の約半分と、政治的影響力の高い大阪と東京を確保。ここに日本国仮政府の設立を宣言するため、東京への遷都を発表した。

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だが、門脇は横須賀での米軍との協議の内容から、少なくとも、政治的に独立しかけている東北と九州を何らかの方法で併合させなくては国際的な日本の政府が認められないことを認識していた。

たが、それはしばらく後になるだろう。まずは、例外なく戦場になった関東と甲信越の復興、そして政府基盤の構築を進めなくてはならない。

エピローグ1:[日本と呼ばれた土地]

(飯島)「―聞こえているか?もうすぐ一行が見えるはずだ。」

(謎の男)「ああ、見なくてもわかる。民衆の声が徐々に大きくなっている。」

(飯島)「さすがに東京は忠誠心が残っていたか。日本政府が残っていた時よりかははるかに少ないが。それより、準備はできているのか?」

(謎の男)「ああ、もちろんだ。だが、本当にやっていいんだな?」

(飯島)「ああ。治安や、監視の目が構築されていない今が最後のチャンスだ。」

    (しかし、門脇将軍もよくやったよ。戦争で劣勢になり、府民の不信感を利用しようと思ったが、まさかほぼ問題なく東京を制圧するとはな。)

    (だが将軍、あんたが求める天皇をトップとした権威主義や立憲主義は確かに以前の日本へ元通りにするのにはぴったりだが、物理的にも心理的にも国民はバラバラになった。)

    (もはや、ここには日本という国は存在できない世界になったのだよ。)

    (その結果がどんなものかは、天国か地獄で見ていてくれ。)


(達也)「こちら護衛部隊。周辺に異常なし。」

(門脇)「了解した。飯島の奴も残党処理なんて部下に任せてこっちに来ればよかったのにな。」

(達也)「…まぁ、あいつらしいです―」

皇居に入城しようと軍に守られながら陛下と門脇が同乗した車に対して轟音が鳴り響く。

(達也)「!」

    「ま、まさか…」

    「し、し、将軍!?…へ、陛下あああ!」

余りにシンプルな状況に達也は事態をすぐに飲み込んだ。どこからか現れた砲撃がピンポイントに陛下と門脇が乗る車を完膚無きまでに破壊したのだ。

ここに、京都政府のトップ、そして次世代の日本を取り戻すための象徴的存在が消滅した。死者4名。戦争に比べればあまりにも少ない犠牲だが、精神的犠牲は計り知れないものがあった。

後に、この攻撃はかつて失われたミサイル技術を独自にサルベージして修理された対地ミサイルによるものだと判明した。犯人は逃走に成功。現場に残された兵器システムも、民生品やメーカーがバラバラなこともあり、ついに、犯人の特定は打ち切られてしまった。

エピローグ2:[アレックスレポート:1957]

私がアメリカに帰還できてから10年が過ぎた。あの時はあのまま日本政府が近いうちに発足し、アメリカンドリーム計画は成功するに思えた。

だが、陛下と門脇将軍を失ったことは、議会制ではなく君主制を採用した京都政府にとって致命的だった。達也が東京で早急に事態の沈静化を図ろうと、後継者を選ぼうとしたが、旧日本政府が女性皇族が天皇になることを認めたという事実が後継者問題を勃発させた。京都の有能な女性候補と、東京の家系による無能な男性の候補。

伝統か、改革か…

また、京都軍の飯島による軍閥組織が独立した勢力を築くために北陸を支配、また、これ以外にも現行の政府を見限り、武家による中央集権体制派、共和派などといった様々な勢力が京都領内に出来上がった。私が考える限り、門脇将軍の方針を快く思わない飯島がこれを扇動したのだろう。

後継者問題が戦争へと発展し、京都の影響力が弱まった中国、九州、四国の土地の奪い合い、そして、東北の巨大同盟形成からの大規模内戦が始まったのは1946年の事である。

そのなかで、我々第7艦隊は再度、小型無人潜水艇による情報と命令が同封された物資を獲得。それは、中露との世界大戦終結とそれに伴うアメリカ本土への帰還命令であった。

1946年10月に横須賀に残留米国人が全国から集められ、横須賀を後にした。そもそもアメリカンドリーム計画で日本を孤立化させた原因は米国が強力なECMでGPSなどといった航法装置を無力化し、海外に出る、もしくは外から日本に入ろうとしてもいつの間にかUターンさせるよう地図を操作するというものであった。

もちろんその解除方法を知る米海軍は一時的に解除することで米本土へと移動できた。アメリカンドリーム計画は日本を見限ったことになるが、第7艦隊の回収と再戦力化を行えたため、一応は成功である。

47年に米本土へ帰還し、日本の状況を説明し、ECMの稼働継続の是非が問われた。しかし、この複雑でまるで戦国時代の様相を示した日本を救おうなど米国は思わなかったし、今は国内復興で手一杯であった。また、中露も、この混沌とした情勢には突っ込むことはなかったという。

―(中略)―

今でも日本は戦国時代なのだろう。今は誰が主導権を握っているかはこの世界の中では誰もわからない。もはや世界から日本という地域は消滅したのである。

だが、私は覚えている。侍の復活と君主に忠誠を捧げる私の知る限りの古き良き日本を取り戻そうとした人たちを。もしも、日本がもう一度復活するのであればというわずかな期待を胸にし、日本がどのような国であったのかをもう一度、知ってもらうために私はこのレポートをここに残す。


HOI4都道府県modAAR 逆上洛  完



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Last-modified: 2019-10-05 (土) 20:35:24