HOI4/逆上洛

天下分け目の戦い

開戦

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京都軍はその広大な戦線での状況把握に努めるため、防衛重視の作戦を行った。これは、関西平定の時の失敗を反省しての事であった。

各地の軍団から集められた大量の情報が前線から遠く離れた京都の総司令部に次々と送られてくる。

開戦から約半月ほど経過してからもたらされ、分析された重大な報告は以下の通りであった。

1:神奈川県は首都保護圏の行動に追従せず、戦争状態に移行しなかった。
2:開戦前の予想通り、敵軍に少なくない補給の不足が発生している。
3:空軍はほぼ全ての戦線において制空権を確保した。
4:敵軍の攻勢は完全に阻止することができた。

(門脇)「予想したほど敵の攻勢が強くなかったか。」
 
    「しかし、前線に出なくては本当の状況がわからん。前線に総司令部を設けるべきか?」

(京都軍参謀)「将軍は軍事だけではなく、政治にもかかわる身です。万が一のことを考えればやめていただきたいですな。」

(門脇)「やはりそうだろうな…。」

この戦いに恐らく2度目はない。となると、前線に赴いて陣頭指揮を執り、持てる力の全てを使いたいのが門脇の本心であり、本懐でもある。

だが、それが許されないほど戦争は進化した。今はただ、前線により効果的な指令を言葉で伝えることだけである。

門脇はほどなくして、神奈川に宣戦布告した。これは神奈川から進軍するルートがこの戦争においての京都軍の勝利の鍵でもあったからだ。

また、他の戦線も徐々に攻勢を開始した。ここからがこの戦争の本番である。

山で、街で、森林地帯で

京都が接していた県境のうち長野、山梨、神奈川という広大な戦線の全てで熾烈な戦いは続いている。この戦線はどこかの湖で途切れることもなければ、巨大な山脈さえも戦場の例外とはならなかった。

戦争は京都軍の優勢である。神奈川西部は既に陥落し、前線で指揮する司令官たちには一応の安心を感じられた。だが、関東軍も各地からうまく戦力を転用し、防衛することで京都軍の更なる突破を阻止した。

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長野と山梨の戦線ではこの時でも兵士が広大な森林地帯や山岳地帯を進んでいる。補給も万全でなければどこから敵が側面攻撃を行うかという恐怖に襲われていた。これは関西での戦争でも同様であったが、この時とは戦場が広いこともあり、近くの味方との連携効率も格段に下がっていたのだ。

さらに、雪にも襲われていたことで部隊はさらに消耗した。途中で町を見つければ京都軍の部隊は一目散に制圧作戦を行った。まるで遭難者のようであった。

かといって、神奈川戦線も楽ではない。関東特有の広大な人口密集地帯が京都軍を苦しめ始めた。住宅街が森林地帯の代わりとなったのだ。既に民間人が避難したこともあり、関東軍は住宅の屋根や、庭に隠れ、ビルは要塞と化した。これも市街地が広いことと、敵空軍との熾烈な制空権の奪い合いによる対地支援の不足が京都軍の進軍速度を低下させた。

この戦いに逃げ場はない

海の侵略者と守護者

太平洋艦隊は開戦と同時に敵主力艦隊の捜索を開始した。だが、敵艦隊を発見するには至らず、アレックスはいまだ成果を上げられない海軍の状況に苛立っていた。

(アレックス)「決定的ナ制海権の確保がナケレバ陸軍は沿岸にもチュウイスルことになる…」

       「なんとか敵艦隊を誘い出さないトいけない…!」

つい先日にも開戦時に千葉への陽動強襲上陸を行った10個師団が関東軍のカウンター上陸により初島で殲滅されてしまった。これは京都軍が制海権を確保できなかった何よりの証拠でもあった。

アレックスはここで敵を誘い出すために太平洋艦隊の一部を使った通商破壊作戦を命令した。輸送船団に被害が出ることで敵海軍は護衛戦力を割かねばならない。つまり、この護衛艦隊を誘い出して、敵艦隊を徐々に消耗させるという事である。

この作戦はすぐに効果が出始めた。敵艦隊の活動が活発化したのである。

遂に京都軍のある戦隊が敵艦隊と初めて大規模な戦闘を開始した。戦力差は以下のとおりである。

京都軍軽巡洋艦7隻・駆逐艦36隻
関東軍軽巡洋艦5隻・駆逐艦12隻・輸送船1隻

日本崩壊後から高度な軍事技術が失われたこともあり、ミサイルに関しては使用不能と言ってもよい状況であった。これは戦艦の復活により海上戦闘が第二次大戦以前に戻ったことを意味した。

双方とも砲撃戦に移行し、空軍の支援もないまま戦闘は開始される。このような状況下ではかつて補給艦扱いであった「おうみ」でさえも京都軍の脅威となった。

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戦闘は双方とも多くの駆逐艦を失い、終結した。だが、この後もアレックスによる通商破壊戦略とそれから守る関東海軍との戦闘は幾度となく発生するのである。

しかし、アレックスが懸念していた横須賀の米艦隊は一向に確認されなかった。真実は横須賀が陥落するまでわからないということなのだろう。

1944年6月7日 リニア中央新幹線開通

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幾多の動乱の中でもリニアの建設は途絶えることなく進み、ついに東京から大阪への全線開通が達成された。現在のところ、関東地方での戦乱による被害も少なく、1日に2往復程度ではあるが運行されているとのことである。

だが、今までの情勢下においてなぜリニアが走ることができるように至ったかは運営会社の地道な政治活動のたまものである。

(門脇)「しかし、うまくやってくれたよな。様々な陣営に呼びかけてリニアに関してはいかなる陣営にも属さない中立地帯であって、リニアを使った戦争被害の類の責任は一切ないという事を認識させた。」

    「確かに経済効果はすさまじい影響を見せているし、リニアを使った関東からの脱出や移民が進んでいる。関東には悪い話かもしれんが全国的に見れば利益が出る話になったのが証明されたわけだな。」

しかし、中立地帯であると同時に自由な移動が可能だという事による新たな脅威もすぐに門脇に伝えられた。

(京都軍参謀)「―門脇将軍ですか?新大阪駅のリニアホームで検問を行っている警備部隊から埼玉軍の特殊部隊らしき集団を拘束したと報告がありました。爆薬や、サブマシンガンが既に確認されています。」

(門脇)(そりゃそうだ。自由な移動ができるってことはすぐに要衝を襲撃できるわけだからな。)

この関東軍の特殊攻撃計画はこの後も幾度となく試みられることとなる。

1944年6月16日 八王子占領

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神奈川県西部を制圧した京都軍は東進する部隊と北上する部隊に分かれ、攻勢を続けて八王子の占領に成功した。この都市は東京軍の拠点ではあるものの戦略的価値は少ない。

しかし、この八王子を占領したことで京都軍はついに東京領への第一歩をようやく踏み出したこととなる。その点でいえばこの都市の精神的価値が非常に高かった。

交渉

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(京都軍士官)「畜生、上層部の奴ら、いつもとは違って占領を催促するなんてなぁ。たしかに戦略的に重要な拠点であるのはわかるけどよぉ…」

       「ここが横須賀駅か?…おいおい、既に俺達の艦隊が湾内にいるじゃないか。

横須賀に近づくにつれて京都軍上層部は当該地域の部隊に積極的な攻勢と横須賀の占領を催促した。全線にわたり堅実な攻撃を行うのが京都軍の戦法であるはずだが、ここにきて限定的にそこから逸脱したのはアレックスが上層部に働きかけたからであった。

いまだに残る米艦隊の真相。それを解き明かすためである。

既にアレックスは現地の情報が足りない中、横須賀基地へコンタクトを行った。

(アレックス)「この暗号を送れば反応があるはズ…」

アレックスが送った暗号は「アメリカン・ドリーム」。日本に残った残存艦艇が独自にコンタクトする際に使用が許されるいわばあいさつの暗号である。

…そして、この暗号は日本が海外との交流ができる状態まで復興した事を本土に知らせるための暗号でもある。

(空母あかぎ艦長)「アレックス提督!通信が入りました。相手の名前はロバート・A・ジョンソンだそうで、提督との直接会話を求めています!」

(アレックス)「!」

       「すぐに回線を寄越してクレ!」

アレックスはこの名を知っていた。米海軍に入隊してからの友人であり第7艦隊の総司令である。彼が生きており、基地にいるという事は、第7艦隊の親玉に重大な事態が起こっている可能性が低いという事である。

(ロバート)「(噂は聞いていたぞアレックス。ずいぶんとご活躍のようじゃないか。)」

英語で会話は進められ、アレックスはロバートの招きにより護衛なしで米海軍の横須賀基地へと上陸した。


(ロバート)「やあアレックス。軍服以外は変わりなさそうで安心したよ。」

(アレックス)「あなたは、ずいぶんと変わってしまいましたね…」

顔には面影が残っているが、おおらかで腹が出ていた以前の姿から、やせ細り、目にクマができている友人の姿にアレックスは驚かされてしまった。確かにロバートなのだろうが、どうやら、この情勢下でのストレスにやられてしまったらしい。

(アレックス)「しかし、艦隊もご健在なようですね。」

(ロバート)「いや、そうでもないのさ。ロクな整備も補給もないからな。船の老朽化が問題となっている。食料を横須賀市から裏で調達し続けることができているのだけが救いだな。」

確かに周りをよく見るとくたびれた艦船が多く見える。まだ戦闘には耐えられそうではあるが、このままでは米艦隊が自然消滅しかねないとアレックスは感じた。

(アレックス)「どうにかできそうですかね?」

(ロバート)「それも含めていろいろと話そうじゃないか。」

二人は原子力空母ロナルド・レーガンのブリッジに移動した。


(ロバート)「先日、無人の超小型潜水艇が横須賀基地に漂着しているのが確認された。冗談だと思ったが、中身は日本あての物だった。」

(アレックス)「…手紙の類ですか?」

(ロバート)「米本土の新聞だよ。ご丁寧に翻訳付きでな。ただの新聞かと思ったがね、一面には戦争の話題が書いてあったんだよ。知らない間にアメリカンドリーム計画は最悪のシナリオになっていたわけだ。全面戦争はすでに2年程経過しているようだ。」

      「この際、君に教えてしまおう。アメリカンドリームという暗号はこの計画のために作られた暗号なわけだ。そして、日本を世界から孤立させたのはほかならぬ我々アメリカ合衆国だ。」

アレックスは衝撃を受けた。だが、そこからさらに問い詰めることも、考えるまもなく、ロバートは計画の真相を明かし始めた。


ロバートのみに伝達されたアメリカンドリーム(仮称)計画の詳細はこうであったという。

1.日本が国外との一切の連絡が絶たれることが予測されるが、米国・インドと中国・ロシアとの全面戦争一歩手前の情勢下において戦争状態に移行した場合、米国は軍事力低下による世界に対する影響力の激減が見込まれる。

2.特にアメリカ海軍の被害は大きく、最低でも4個艦隊が半壊ないし壊滅の危機に瀕する。

3.意図的に第7艦隊を日本に駐留させ、日本政府の再建後の米国主導の体制回復と艦隊を回収することで戦争中もしくは戦後の米艦隊戦力の再建を果たす。

4.このためには日本が米国以外からの強制的な再建を防がなくてはならない。そのためには秘密裏に…

ここでロバートは話を打ち切ってしまった。

(アレックス)「肝心のその先はどうなっているのですか?」

(ロバート)「それは取引が成立したらにしよう。確かにアメリカが原因ではあるが、そのために使われたモノについてはまだ明かせないな。」

      「正直に言うとな…この計画の最終段階には日本政府の再建が必要だ。だが、京都は新たな日本政府になれるか私はまだ確証が持てない。確かに君たちには天皇がいる。武家が再興したのはよくは思ってないが、そのおかげで日本経済の主要部分を掌握しつつある。正当性は十分だ。」

      「しかし、強力な勢力である東北と北海道の同盟や、西日本の掌握は達成されていない。それに我が艦隊の損耗も無視できないがまだ様子見できる余裕はある。我が米軍の再建も必要だが、依然と同じように日本と米国との関係を維持するのもこの計画には書かれている。よって、完成された日本政府が必要なわけだ。」

(アレックス)「つまり、そのために京都政府を試す必要があると?」

(ロバート)「そうだ。本当なら時間をかけて日本が復活すればよかったのだが、国内外の情勢が変化しすぎたことを知ったからな…こうもしなくてはならなくなったわけだ。」

      「アレックス。そっちの政府と話ができるようにはしてくれないか?」

もちろんアレックスは快諾した。

…だが、京都政府と第7艦隊の対談はうまく進みはしなかった。ロバートの発言の通り、京都に正当性はあっても日本全体を見れば京都が日本となるだけの内政や勢力が整えられていなかったからである。


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Last-modified: 2019-09-01 (日) 10:01:16